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千葉家庭裁判所松戸支部 平成8年(家)127号 審判

主文

本件申立てを却下する。

理由

1  申立ての趣旨

相手方は申立人に対し、婚姻費用の分担金として毎月8万円を支払え。

2  当裁判所の判断

一件記録によれば、次のとおり認められる。

(1)  申立人と相手方は、昭和61年10月結婚した夫婦であり、その間に長男雄一(平成元年10月2日生)、次男俊次(平成3年10月17日生)、三男洋志(平成6年1月5日生)がいるが、平成7年9月3日、主として相手方の不倫行為が原因で、両者は別居し現在に至っている。

相手方は申立人に対し、同年10月初めに9月分の生活費として金8万円を送金したが、その後の支払いはない。

(2)  別居後、申立人は実家の両親方に同居し、小学1年の長男、保育園児の三男とともに生活していたが、平成8年4月から肩書住所のアパートで二人の子供と一緒に生活している。別居後、幼児を抱えての就職は困難であったが、本年4月から病院の看護助手として勤務している。病院から得た収入は平成8年4月分が手取り6万9282円、5月分が手取り7万9063円であるが、止むを得ない事情で欠勤するようなことがあり、収入は安定していない。そして、その収入の中から、アパートの家賃4万2000円、長男の学童保育費7,000円、三男の保育料1万1190円を支払わざるを得ない状況である。

(3)  現在、相手方は肩書住所で父(無職、年金受給)、母及び保育園児の次男と同居し、近くの美容院の一室を借り受けて整体師を開業している。平成7年度分の収入合計は手取り439万2955円であるが、この中から、営業上の必要経費65万5979(平成7年度分の源泉徴収票によれば、営業上の必要経費として121万2179円が認められているが、この中には営業機器リース料55万6200円が含まれているところ、後記のとおり、必要経費とすべき借入金の返済分に営業機器リースのための借入金返済分が含まれているので、右リース料55万6200円は必要経費として認めるべきではない)を差し引いた額は373万6976円(月額31万1414円)である。この中から、次男の保育料月額1万6800円、地方税月額1万円、国民健康保険料月額1万5000円、国民年金保険料月額1万0500円の支払いが必要であり、更に、現在、約10カ所からの借入金を抱えており、月額26万1060円の返済を余儀なくされている。この借入金は主として申立人と同居していた当時の生活費の補填、三男の入院費用、整体治療器のリース料支払いなど営業資金調達のためなどにより生じたものであり、止むを得ない必要経費と見ざるを得ない。

以上の事実によって検討するに、申立人と相手方が前記の経過によって別居するに至った事情、申立人らの現況等によれば、相手方は申立人らに対し、自己の生活と同程度の生活を保障するいわゆる生活保持の義務を負担すべきことは明らかであるが、相手方の止むを得ない必要的支出(合計月額31万3360円)は収入(月額31万1414円)を超えており、申立人らについての婚姻費用を分担する能力はないと言わざるを得ない。このように分担能力がない以上、これに分担を命ずることはできないから、結局、申立人の本件申立ては理由がないものとして却下せざるを得ない。

よって主文のとおり審判する。

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